上 司

 

「あ…ふ、ふくちょ、 …やですこんなの…」
「少しは黙ってろよ」
「…」

鎖骨に噛み付かれて山崎はふるりと体を震わせた。
土方は構わず抵抗しようとする手を捕まえて、山崎のシャツの釦を片手で外していく。

「副長、」
「…こういうときはそれで呼ぶな」
「で、でも」
「退」
「…あ、ちょ…だめです、ッ…つちかたさん」

ガッツン。
土方がすかさず頭突きを食らわせ、山崎が悶えているのも気にせずにぱっと離れた。黙って立ち上がって部屋を出て行こうとする。

「え、ちょ、なんですか副長!」
「お前監察なんかクビにしてやる!」
「えーッ!?俺なんかしましたか〜〜?」

わけが分からないままの山崎を無視して土方は乱暴に扉を開けて部屋を出た。
ぷ、と笑い声がして、視線を巡らせると沖田が立っている。

「つちかたさん」
「じゃかぁしい!」
「仕事中に盛ってるからバチが当たったんですぜィ」
「…聞いてんじゃねぇよ」
「じゃあ夜にしなせェ」
「…だからって上司の名前間違えるかあいつは!しかも監察!」
「誰かさんが働かせすぎるからあいつは内部のことは却って知らないんですぜィ」
「…」
「ま、ここは俺に任せてくだせェ」
「待てお前は何も関わるな」
「山崎〜♪」
「…」

 

*

 

「副長!」
「…おう山崎、どうした」
「ちゃんと名前覚えました!」
「…」

言ってみろ、とすぐ言いたいところだが、あの沖田が絡んでるとなると即答もしがたい。
しかしなにやらにこにこしている山崎を見ると言いたいのだろうと思い、言ってみろと苦い表情で伝える。

「つじかたさん!」
「…切腹なお前」
「えっへっへ冗談ですちょっと待って下さ、ぎゃーッちょっと待って冗談ですってほんとほんと!刀しまって下さいッ」
「くだらねぇ冗談は嫌いだ俺は!」
「ぎゃあああああ」

勢いで畳の上に倒された山崎は慌ててずり上がっていく。
抜き身の刀が側に近付いてくるのでどんどん壁際に追い込まれ、ついに壁にぶち当たった。土方の表情が真剣に見えて、山崎は流石に冷や汗をかく。

(お…沖田隊長の嘘つき…つーか信じた俺が悪いのか…だって副長の名前なんか普段呼ばないし記憶にあるのは主に字面だしさー。わーん局長とかなんて呼んでたっけ〜〜??)
「おい覚悟の時間が長ェな山崎」
「ちょ、ちょっと待って下さい……と、トシさん?」
「……」

キィン、刀が畳に捨てられた。
あれ、と山崎がそっと目を開けるのと同時ぐらいに胸元が引き寄せられた。

「んぐっ…ん、んーッ」

壁に押し付けられて逃げられない。土方を押し返そうにも力の差は歴然だった。

「…あの…せめて夜にしません…?」
「もう数時間後にゃ夜だ」
「ちょ…」

 

*

「…ち、山崎の奴回避しやがった…」
「総悟?トシの部屋なんか覗いてどうした?」
「あ、気にしないでくだせェ、土方さんのストーク中なんでさァ」
「…そうか、ところで山崎知らねぇか?」
「知りやせんねぇ」
「そうか…何処行ったんだろうなー」
「お、土方さんなかなか変態…」

 

 

 


うちの妹がつちかたさんとかつじかたさんとか言うから。書きたくなって勢いで書いたのでノリだけでした。失礼。

041008