斬と裂くような笑い声
どうして刀は重いの、無邪気に聞いたことがあった。鉄の塊だからな…そんな言葉が欲しかったんじゃないことだけは覚えてる。
「土方さぁん」
「なんだよ…寝かせろ」背中に張り付いてくる沖田を鬱陶しげに見遣れば、そんな視線にも動じず、くるくるとせわしない目で見返してくる。まるで子どものようだ…しかし子どもではないだろう。大人でもない。姿だけなら純心無垢でもおかしくないのに、これで悪魔なんだから世の中無情だ。
「あんたはいいんですかィ」
「…何がだ」寝る体勢の土方の邪魔をして沖田は枕を奪う。いつか寝首を掻きやすぜィ、声は誘うようで肌が泡立った。未来を考えざるを得なくなる。
(今更そんなこと 聞くな)
「土方さぁん」
「…盛ってんじゃねーぞ」
「もうダメですかィ?年だなァ」
「お前な…」でかい喧嘩をしたばかりで高ぶっているのだろう。溜息をついて沖田の頭を胸に押しつける。大人しく腕の中に収まったように思えたが、望む行為がないとわかって起き上がった。面倒くせぇと言わんばかりの土方の表情を読み取って睨んでくる。
「寝たらほんとに寝首掻くぜィ」
「あーもう好きにしろ」しっしっと追い払う仕草をして、暑いのに頭まで布団に潜り込む。その上に沖田は乗り上がってきた。厄介だ。
「初めての夜ぐらい優しく睦言囁いたりできねぇんですかィ」
「…してほしいのかよ」
「……きしょっ」想像したらしい。そんなに嫌がってもらえるなら期待に沿うしかないだろう。無理に体を起こして沖田を落とし、のしかかるように押さえつける。何かのセリフだったような甘い言葉を耳元で囁くと絶叫された。その声の大きさに慌てて口を塞げば、黙ってそのまま見上げてくる。情をはらんだ視線に舌打ちをして、ゆっくり手をどける。沖田はもう何も言わない。わかっているのだろう。
「めんどくせぇな」
「あんたが背負い込んだんだぜ」
「知ってらァ」沖田が笑い出すのに何故か背筋が凍り、唇を塞いで遮った。相手の呼吸を奪うつもりの口づけに沖田が音を上げて押し返される。
「お前もう笑うな」
「…なんでですかィ」
「怖いから」多分お前に殺される気がする。着物の裾を跳ね上げて脚を撫でる。説得力ねぇよ、少し上擦った沖田の声にあおられた。土方さん、手が伸びて喉に、否、幻覚だ。肩へ回された手は商売女のように白い。
「今夜だけなんて、言わねぇで下せぇよ」
「……ばか」手放すぐらいなら始めから連れてこない。斬られる覚悟はできている。
論点ずれた。土沖ムツカシイヨ…
060721