夢ではないですがオリジキャラが銀さんの彼女ポジションで出てきてます。
名前変換ありでもよかったのですが夢のつもりで書いてないので・・・
「萩」という髪結いの子です。攘夷戦争前の時間枠。

以下スクロール↓

び貴方に会うのをただただ望んでただただ恐れて。

 

 

「ただいま銀時!」
「お帰りお萩ー!」
「あんたが言うと食べ物みたいで嫌ね」

帰ってきた女は真っ直ぐ銀時の背中を踏みに行った。畳の上にうつ伏せになっていた銀時はあーもうちょっと下、なんて笑う。

「お帰り萩」
「ただいま」

萩は側に座り、銀時を転がして仰向けにする。
お帰りなさい会いたかったぜ、ふざけた口調で言いながら銀時は手を伸ばし、萩は笑いながら体を傾ける。少し触れた唇。
銀時の手がきっちり結い上げた女の髪から簪を抜いた。萩は微笑んで体を起こし、自分で髪を解いていく。

「最近帰り早いな」
「仕事減ったからねぇ」
「頼むぜー俺萩の収入で生きてんだから」
「ダメ男め」

萩は笑う。
下ろした長い髪を手櫛で解かすのを見て、銀時は手を伸ばして毛先を引っ張った。

「なげぇなぁ」
「あたし銀時みたいな髪がよかったな」
「実際コレだったら親恨んでるぜ」
「いいじゃん、ふわふわ。わたあめみたいで可愛い」

銀時は体を起こして萩に頭を預けて寄りかかった。さっきまで寝ていたのでまだ少しぼんやりする。

「…銀時、今度一緒にどっか行こうよ。最近江戸も人が減ったから、髪結いの仕事もないし暇なんだ」
「おー、いいねぇ。俺温泉行きたい」
「そんな金はないけど」
「え〜。ハハ、どこでもいいけど」

あんたと一緒なら。声には出さず銀時は囁く。
萩は耳元で聞こえた声に身をよじり、そしてふっと顔を曇らせた。

「…嘘つき」
「え、」
「行っちゃうくせに」
「…」

桂さんに会ったわよ。萩は静かに口を開く。萩の髪で遊んでいた銀時の指が止まった。

「隠していくつもりだったの?」
「…」
「私に黙って」
「萩」
「引き留めたりしないわ」

萩が銀時の手をとる。自分とは違う柔らかい指先。

「だから黙って出ていったりしないで、」
「…うん」
「…」
「桂達と、ちょっくら戦争に行ってくる」
「…行ってらっしゃい」
「…」

銀時は萩の肩に頭を預けて鼻先をすり付けた。微かに白粉の匂い。
ツンと何かこみあげてくるものかあったのを、銀時は俯いてそれをごまかす。

「…萩」
「…」
「触っていい、」
「触ってるじゃない」
「もっと」
「ダメ。最後にとか言うなら絶対ダメ」
「…最後にするつもりなんかねぇよ、俺これでも結構腕立つんだぜ」
「あぁそう」
「…萩」

首筋に唇を落とす。押し返されてあからさまな拒否。萩、名前を呼ぶのも苦しくて。

「…ダメ、危険日」
「…中で出さないし」
「信用ならない。あんたがいなくなるのに子どもだけ残されたら最悪、あたしは父親のいない子は育てたくない。知ってるでしょ、母さんが一人であたしを育てたの」
「…萩、」
「待ってていいの?」
「待ってて」

ちらりと萩が銀時に視線を送る。出来るだけ真っ直ぐ視線を返した。誰かが彼女に触れる様を思うと己の敵を見誤りそうだ。

「絶対帰ってくるの?」
「絶対」
「嘘吐いたら針千本飲むのよ」
「刀飲み込んでやるよ」
「…ばかじゃないの」

大好き。

 

*

 

「───こういう話聞いて楽しい?」
「…彼女、どうしてるんですか」
「んー、」

殆ど空のパフェをつつきながら銀時は頬杖をつく。
姉がストーキングされるようになってから身近な男を警戒するようになったらしい新八を見た。シスコンめ。

「…戦争が終わって帰ったらよ、そこも戦地になってたもんであばら屋ごとなくなってたな」
「…」
「はいはい話はおしまい、生憎俺はお前のねーちゃんみたいなゴリラに興味はねぇんだ。俺はパチンコ寄って帰るからドラマの再放送録画しといてくれ」

パフェを完食して銀時は席を立って店を出た。
あーやだやだしんみりしちゃって、
頭を掻いて適当に道を行く。すれ違う者の天人の多さ。自分達の戦は結局無駄だったのだろうか。

───あの部屋を訪ねたとき、近所の顔なじみはまたそこで暮らすつもりで復興に取り組んでいた。
そこで聞いた話によれば、彼女は街が壊されるまで確かにここに住んでいたらしい。その後の生死は知れない。

『心配だなぁ、あの子もまだ小さいし』

声が蘇る。

『なんだよ、知らなかったのか!?彼女ひとりで子どもを生んで』
『見事に遺伝してるって苦笑してたぜ』

「…久しぶりに、行ってみるか」

あなたがあそこへ戻ってないか。
きっと相変わらずの安物の白粉はたいて、長い髪を結い上げて。片親で育てた子はきっとあんたに似て強い子だ。

「…どこ行ってんのやら」

 

待っててって言ったのに。

 

 


041004