ると君が言うのは引き止めての合図でしょう?

 

 

「ん…」

のそりと体を起こし、くああと派手にあくびをして沖田はまた枕を抱いて丸くなった。
なんだかいつもと違う甘い匂いがして、心地よさにシーツに頭を擦り付ける。ふっと違和感に気がついて顔を上げた。素肌を布団が滑って肩が露わになる。
隣で眠るのはふわふわの頭。

「…あぁ…」

自室ではないのだ。ぼんやりとその頭を眺める。
何故浮くのか、沖田にしてみれば不思議な髪に触れてみた。予想外に手が沈んで可笑しくなりながら、また改めてシーツに頬を寄せる。
彼と同じ調子で寝ていたということはもう昼過ぎなんだろうか。時計を探すのも億劫で、しばらく天井を眺めてから沖田は目を閉じる。

(…しまった、仕事)

今日は午後からということにしていたはずだが、今頃土方が部屋に怒鳴り込んでいるのかもしれない。やはり誰かに一言告げてから来た方がよかっただろうか。
窓は締め切っていたと思うが、室内の気温も丁度よく、また睡魔が襲ってくる。何より落ち着く甘い匂い。

「…万事屋の旦那ー」

目を閉じたまま呼んでみる。何も気配は変わらないので、沖田は目を開けて起き上がった。
眠る男を仰向けにして体を跨ぐ。シーツの跡のついた頬を笑って唇を落とした。

(…あ、なんか苦しんでやがる)

難しい表情に変わった寝顔をしばらくじっと見下ろした。
変な顔、呟いて。

「…帰りますぜィ」
「あーそう?」
「…寝たふりたァ悪趣味なおっさんだ」
「おっさんじゃねーって」
「ジャンプ如きで若作りはできやせんぜ」
「お前なかなかしつれーだな。若気の至りでもなきゃお前なんかに手ェ出すかよ。帰るんだったら服着て、帰らないんだったらこっち」
「…帰る」
「んじゃ早いトコ降りて帰る準備でもしてくれ、おっちゃんその気になっちゃうぜ」
「…じゃあサボる」
「お、積極的」

もぞもぞと布団に潜り込み、いざ口付けを交わさんと顔を寄せた。

「銀さん仕事ですよ!起き……」
「…新ちゃん、あと1時間ひとりで頑張っといて」
「……」

触れ合う時間が全然足りない。
互いの肌に手を滑らせて。

 

また今度、まであとひと時を。

 

 

 


ノーコメンツ。

040923