03:はなごおり(土山)

「何でィそりゃ」
「氷ですよ。中にね、花が入ってるんです。一緒に凍らせてあって」
「フーン」

興味がなさそうに返し、沖田は土方を見た。何故視線を向けられたか分からない土方は顔をしかめる。

「すっごい綺麗なんですよー、開店中は冷凍庫から出して飾ってあるんで見に来て下さいよ」
「生憎好き好んでかまっ娘倶楽部なんかに行こうとする気はねェや。土方さんが行くってよ」
「誰がそんなこと言った!」
「えー、折角杉くんの力作なのに」
「…は?あいつが?」
「はい。杉くん手先は器用なんですよ」
「だから女に事欠かねぇんだな?」
「沖田さん…」
「お前ら今日も何ガタガタ言ってんだ?」
「あ、杉くんおはよー」
「嫌味か」
「嫌味言われる自覚はあるんだね」

いかにも寝起きの様子で教室に入ってきた高杉は面倒くさそうに歩いてくる。どかっと土方の机に座り、土方と 山崎の間を遮った。土方が睨みつけても笑うだけだ。

「昔っからしょっちゅう作ってたの」
「…おぅ、陸奥も来たのか」
「アハハ、むっちゃんも実は出席足りてないからね」
「夏休みだったのに結局学校でいつものメンバーだな。ザキは来なくても足りてるのに物好きな」
「バカ言うな、お前らバカは補習、俺は生徒会!」
「…土方って何?」
「………副生徒会長」
「あぁ、そりゃうちの学校もバカ校って言われるな」
「どういう意味だ総悟…」
「そのまんま」
「〜〜〜〜!」
「銀八来んのう…」

背後の喧嘩に耳も貸さず、陸奥は団扇で風を送る。それもあまり涼しくない。
今まで一生懸命昼食を食べていた神楽が高杉をつつく。餌はやらねぇぞ、と返して殴られていた。

「花氷ってどうやって作るアルカ」
「イテェ…あ?水に花入れて凍らすだけだろうが」
「何に入れるアル」
「牛乳パックで十分だ。湯冷ましの水使えよ、気泡が少なくなる」
「つーかお前にそんな花とか氷とか繊細なモン似合わねぇな」
「アハハ、杉くん意外と芸術家なんですよ」
「俺ァ美しいモンはこよなく愛すだけだ。だからな、そう────花火とか」
「!」

高杉はにやりと笑って土方を見てくる。まさか。まさかまさか。
青くなっていく土方に、高杉は伏せた写真を一枚突き出した。表へ返さなくとも、土方には透視できる気がした 。

「…高杉…」
「お前らいつの間にそこまで行ったわけ?もしかしてもっと進んでる?」
「何?何の話?」
「山崎は喋るな!」
「えー」
「何?写真見てくんねぇの?」
「写真って何アルカ?寄越せ!」
「わっ…渡せるかッ!」

土方は立ち上がって逃げ出した。しかしその後ろで神楽と沖田がタッグを組んでは、恐らく逃げられるないだろ う。いや絶対に。

「…杉くん、何の写真?」
「あん?────美しいもの、題して欲望に忠実な夏」
「3点」

陸奥の酷評にも山崎は首をかしげるだけだった。

溶けない氷に閉ざされて、一瞬を守る一枚の写真。
消えない過去に一瞬目をやり、土方は走りながらそれを破り捨てた。


な、なんかセリフばっかりに…。
高杉はむっちゃんと祭りに行きました。花氷は一応調べたんですが嘘かも。
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